【キャラ作成】
序章:キャラクター作成 ――GM、苦肉の策を弄する―― その日、前もって新規キャンペーンの立ち上げをプレイヤー各位に連絡していたGMは、自宅である厚木市某所にプレイヤー5名を集めると、おもむろに録音テープを回し始める。 本当はプレイヤー6名の予定だが、1名は到着が少し遅れることになっていた。 GM:みなさんはじめまして。 プレイヤー一同:はい? はじめましてじゃないだろ。 GM:いや、今日は心機一転して、リプレイ作成目的のテーブルトークセッションを開催するので、みんなはじめましての気持ちでがんばりましょうということで。 プレイヤーG:マジでリプレイ作るの? GM:まじですよ。そのための新規セッションです。まあ、たまにはいいじゃないでしょうか。こういう趣向も。 プレイヤーM:いい記念になるかもしれないから。 プレイヤーS:何か、今までと変わったことやるの? GM:なんと今回、オリジナルルールのAA・TRPGが一応完成版となりました。今までは市販の既存ルールを勝手に大幅変更して使ってましたが、今日から完全にルールが一新されます(と言いつつ、プレイヤー6名にそれぞれ一枚ずつ、キャラクターシートを配り始める)。 プレイヤーK:お? プレイヤーT:なんかキャラクターシート、新しくなってる。 プレイヤーG:(キャラクターシートを見ながら)これ、ワープロで打ったの? GM:ええ、まあ。四苦八苦しながら打ったよ。 プレイヤーG:パソコンで作ればいいのに。 GM:うちのPC−98はプリンターが壊れちゃって印刷できないんだよ。だからワープロで打ったの。 プレイヤーS:新規キャンペーンということは、キャラクターは新しくつくり直すんだよね? GM:もちろん。今回はみんな駆け出しの冒険者という設定なので、レベルは1からね。 プレイヤーT:げ。マジかよ。 プレイヤーG:いまさらレベル1からなんて、ちょっときついね。 GM:本当は初期のレベルは0からなんだけど、それだとあんまりにも一般人すぎて、クラスによる特徴もあまり出ないから、プレイヤーキャラクターたちは少しは経験を得ているということでレベル1からになります。 プレイヤーT:せめてレベル5くらいからにしてくれよ。 プレイヤーS:レベル1って一般兵レベルじゃん(笑)。 プレイヤーM:一般兵レベルどころか、一般人レベルですよ(笑)。足軽以下の存在(笑)。 GM:まあ、最初は大変だけどレベルが低いうちはすぐに成長して強くなっていくから。成長を期待しましょう。 プレイヤーT:いや、成長するまでも無く、間違いなく初回でみんな死ぬな。全滅だ。 プレイヤーM:いつもの流れだと生き残るのは不可能(笑)。 GM:いやいや、今回は、いつもの長期キャンペーンとは違って、そんなに大規模な戦乱とか異変とか起きないから。 そういうワケわからん滅茶苦茶な話は横に置いといて、レベル1から市井の片隅に生きる、貧乏食い詰め冒険者たちのほのぼの和製ファンタジーをやりましょうということで。 プレイヤーS:ほんまかいな(笑)。 プレイヤーK:ワケわからんって、普段やってるのはアンタだよ。 プレイヤーM:このGMでねぇ(苦笑)。いきなり隣国が数十万の軍勢で攻めてきたり、凄腕の暗殺者送り込まれたりしないの? GM:しないしない(笑)。今回は。 プレイヤーK:実はプレイヤーキャラクターの一人が王子で種族アイリンだったとか(笑)。 プレイヤーT:誰かの体内に魔王っぽいラスボスの復活アイテムが封印されてたりだとか(笑)。 GM:ないない(笑)。そういう展開はもう、おなかいっぱいなので。今回は大陸間戦争とかアルサーム世界存亡の危機だとかそういうのはナシで。内輪ネタも極力なくす方向で。わりと一般的な、ほのぼのファンタジーを志向します。 プレイヤーS:キャラクターの種族は? いつもみたいにエルフ族とかやっていいの? GM:今回は、人間の世界であるアルサーム世界のうち西アルサームが舞台になるので、亜人種族は選択できません。 プレイヤーT:ええ? 俺、ドワーフ族の剣士やるつもりだったのに。 GM:ダメです。っていうかそもそもドワーフで剣士ってイメージ的にありえないなちょっと。 プレイヤーT:でもルール的には可能なんでしょ? プレイヤーS:じゃあ、亜人ダメならアイリン族やろっと。みんなもアイリンやろうぜ。めちゃくちゃ強いぜー。 GM:あわわ。今回はアイリン族もダメだって。みんな人間。 プレイヤーS:えー。ぶーぶー。亜人がダメならアイリンはオッケーだろー。アイリンは人間って言ってたじゃん。 GM:アイリンは外見はほとんど人間で、人間と交配も可能だけど、厳密には人間とは別種なんだよ。っていうか、特殊種族は全部ダメ。内輪ネタ禁止。今回はおとなしくみんな人間でいこうよ。 プレイヤーS:ちっ。地味だぜ。 プレイヤーK:まあまあ。たまには地味で平和なセッションがあってもいいじゃないか。 プレイヤーM:普段やってないクラス選ぼうかな。 プレイヤーS:わりと今回は自由に行動していいのかな? GM:いつもわりと自由度満載でやってる気もするけど……。 プレイヤーS:いつもはヒロイックでしょ。英雄的な行動が多い。今回はおふざけキャラとか小悪党的キャラもアリなのかな、とね。 GM:真面目に色物キャラをやるのはよいですよ。パーティーが分裂しなければ、小悪党的キャラもアリです。 プレイヤーK:パーティーの分裂とか味方同士の殺し合いとかはもう懲り懲りなんで。 プレイヤーM:みんなで楽しめる羽目のはずしかたをしましょう。 プレイヤーS:死ぬ危険も少ないみたいだし、グレーゾーンぎりぎりを攻めようかと。 GM:それでは、種族人間、レベル1で各自担当するキャラクターをつくってください。 プレイヤーG:最初は基本能力値を決めるの? GM:そうだね。まず最初に、【筋力】【生命力】【器用度】【敏捷度】【知力】【精神力】6つの基本能力値を決めちゃってください。それぞれ、D6(6面体のサイコロ1つ)です。極めて重要なことを言うけど、この時、1の出目は振り足し可能です。よろしく! プレイヤーS:6の出目は振り足し可能? GM:普段の行為成否判定では6の出目は振り足し可能だけど、最初のキャラクター作成時の基本能力値決めでは6は振り足しできません。1の出目だけ振り足しです。 プレイヤーK:うーい。じゃ筋力から(と言ってダイスを振る)。お、6だ。筋力6。 プレイヤーM:幸先いいね。 プレイヤーS:この最初のダイスがその後の運命をすべて決めるんだよな。一番大事な運試しだよ。 プレイヤーM:もうここで、すべての運を使い果たすくらいの気合で(笑)。……(ダイスを振る)筋力3……いきなりしょっぱいなー。(続いてダイスを振る)生命力は5……器用度は……あ、1だ。ダメだこれは(笑)。 GM:1は振り足し。 プレイヤーM:あ、そうか。振り足しか。じゃあ……(ダイスを振る)5だから、合計して器用度は6、と。 GM:そうそう、そんな感じ。みんな頑張って基本能力値決めてください。それが決まってから、能力値に合ったクラスを選択してほしい。パーティー全体のバランスも考えてね。 その後、あーでもないこーでもないとプレイヤー各位は雑談しながら、キャラクターをつくっていったのである。 クラスがダブるだの、所持金が少ないだの、最大HP(ヒットポイント)が低いだの文句を言いながらも、皆楽しそうに作業を進める。しかしGMは大変だ。それぞれの質問に個別に対応しなければならないのだから。録音では、皆がばらばらに思い思いに発言しているため、さっぱり誰が何を言っているのか聞き取れないことも多かった。 そして、しばらくすると遅れて参加することになっていたプレイヤーRが到着。急いでキャラクターを作成することになる。 プレイヤーR:あーども。遅れてすんません。で、私はどのクラスをやればよろしいので? プレイヤーK:大丈夫。まだ始まってない。キャラクターつくってる段階だから。 プレイヤーM:とりあえず、プレイヤーRさんには戦士やってもらったほうがよいのでは? プレイヤーR:戦士ですか。了解。 プレイヤーM:剣士は二人いるんだけど、二人とも最大HPが低くて盾役が不在なので、盾役の戦士でお願いします。 GM:え? 剣士二人いるのに戦士にするの? でもそれだと純粋魔法を使う魔術士(メイジ)がいなくなっちゃうんだけど。6人プレイヤーキャラクターがいて、魔術士いないってありえなくない? プレイヤーT:だって魔術士打たれ弱いんだもん。すぐ死にそう。 プレイヤーM:TさんとKさんが二人とも剣士なんだよね? どっちか魔術士にしたら? プレイヤーK:俺は前回のキャンペーンで魔術士で痛い目にあったから。というか、1年以上かけて育てに育てたのに殺されたから。今回は剣士でいきます。そもそも、能力値的に知力4、精神力2で魔術士は無理。 プレイヤーT:俺も魔術士無理。能力値が戦士か剣士をやれといっている(笑)。 プレイヤーS:いいんじゃない? 別に魔術士いなくても。レベル低いうちは弱いし。 プレイヤーG:あれ? 君のキャラクター、なにこれエレメンタラー(精霊術士)? プレイヤーS:そう。炎の精霊使い。 プレイヤーG:なんかすごい能力値だけど、マジでこれでいくの? プレイヤーS:マジですよー! いきますよ私は! 精霊使いがいれば魔術士なんかいりませんってー。 GM:そりゃ純粋な攻撃力は炎系の精霊魔法が一番だけど、魔術士がいないと『精神攻撃(メンタルアタック)』の呪文はないし、『魔力感応(センスマジック)』も『魔力解除(ディスペルマジック)』もないから苦労すると思うよ。レベル上がってからの『対抗呪文(アンチスペリ)』も『魔人剣(ザッパシンガム)』も『霹靂(ハレルヤ)』(いずれも高位の純粋魔法。純粋魔法はいろいろと便利でトリッキーな呪文が多く、オールマイティーに役立つのが特徴で呪文の数も多い)もない。 プレイヤーS:そういうのは気にせず、力押しでいくの。 プレイヤーT:ひたすら敵を殴り続ける(笑)。 プレイヤーR:それでいきましょう(笑)。 プレイヤーT:敵が死んでも殴り続ける(笑)。オラオラオラって。 プレイヤーR:なーんか極悪パーティーっぽいんすけど。 プレイヤーM:ぜんぜん知的でないお馬鹿パーティーということで。 プレイヤーT:特技は虐殺(笑)。 GM:あのー、今回は、ほのぼの和製ファンタジーの予定なんですが……。 プレイヤーT:ほのぼの邪悪パーティーでいこう。 プレイヤーR:拷問器具買っておこうか? GM:おいおい。そんな余分な金は最初はないって。で、Gさんはクラス何だったっけ? プレイヤーG:神聖術士(ライトルーンマスター)。 GM:ああそうかなるほど。それじゃあ(魔術士に)変更しないほうが良いかも。 プレイヤーG:神聖術士は回復役として必須だからなー。どちらか一人といわれれば魔術士よりも優先度高いと思うから変更しない。 プレイヤーM:私もスカウト(斥候)ですので。平凡なスカウト。 GM:うーん、一応、リプレイにしてAA・TRPG紹介用の冊子にするつもりだから、バランスよくクラス配分して前衛クラス3人、後衛クラス3人で分かれてほしかったんだけど……。 プレイヤーK:今のままだと、前衛3・後衛3にならない? GM:一応、斥候は前衛キャラクターとしてカウントします。ので、今のままだと前衛4人、後衛2人だね。剣士が一人多くて、魔術士がいない、と。 プレイヤーK:でもその方が強くないかな? GM:うーん。肉弾戦だけならこのパーティーのほうが強いだろうけれど、物理攻撃に対しての耐性をもった敵クリーチャー(いわゆるモンスター)が出てきた場合には、とたんに脆くなるだろうね。物理攻撃を魔術的に強化する付与呪文もなくなるし、敵の呪文に対しての抵抗手段も神聖魔法だよりになる。 プレイヤーS:付与呪文なら、精霊魔法にもあるよ。炎属性化で武器強化するってやつ。剣士さんにかけてあげる。 プレイヤーK:オッケーいざという時は頼みます。 GM:敵に精霊術士が出てきたときにも、大ダメージを繰り出す精霊魔法への対抗手段が少ないかな。魔術士の使う純粋魔法は精霊魔法に対して優位な呪文が多い。 プレイヤーS:あら。ますます魔術士いらないじゃん。私の存在価値が下がる(笑)。 プレイヤーR:そいつはスーパー自己中(極めて自己中心的)っす。 プレイヤーM:Rさん基本能力値決まった? うーんこの能力値だと……魔術士無理か。 プレイヤーR:無理っすねえ。知力2で精神力3っすから。 プレイヤーT:その二つ、筋力・生命力と能力値入れ替えれば? プレイヤーK:GM、彼の基本能力値入れ替えてもいい? GM:うーん……今回は基本能力値の入れ替えは無しで。不許可です。全てデリートして振り直しのみ3回まで。 プレイヤーM:じゃあ、やっぱり戦士しかないね。これ能力値全体は低くないよ。むしろかなり高いよ。 プレイヤーR:うん、戦士でいきます。魔術士は俺も過去に嫌な思い出があるので(笑)。 GM:6人パーティーで魔術士なしかー。コイツは予想外だ(と言ってなにやら困っている)。 プレイヤーS:気にしない気にしない。なんとかなる。 プレイヤーM:魔法も攻撃特化で、力押しでいきましょう。 プレイヤーT:ダイス目がこうだったんだから仕方が無い(笑)。 プレイヤーK:いざとなったら、仲間になるノンプレイヤーキャラクター(略してNPC。GMが操ることになる、プレイヤーキャラクター以外のキャラクターのこと)として魔術士を出せばいい。 GM:仲間のNPCが魔術士だと、あんまり面白くないんだよね。俺の負担も増えるし。なんか興ざめでしょ。行為成否判定の知力判定のたびに味方NPCだけが成功して、「ふむ、それはこれこれこういうものじゃ」とか教えられるのは(笑)。 プレイヤーR:それもありっすよ。 GM:そんなもんかね。まあ、魔術士なしも、しかたないかな。では、Rさん、最大HPと最大MP、サクサクとダイス振って決めちゃってください。 プレイヤーR:うーい。 プレイヤーM:頼みますよ、みんなの盾役! しかし、プレイヤーRがあやつるキャラクターが、戦士として期待されていた高い最大HPは見事ダイスの目に裏切られ1の目を連発。はたして、彼が戦士として物の役に立つのかどうか大いに疑問視されるようになる。 プレイヤーK:(プレイヤーRの最大HP算出ダイスの出目の途中経過を見て)え? 今の足して11? これは……やーばーい(苦笑)。 プレイヤーR:やばい(笑)! プレイヤーS:これはやばい(笑)! 生物として劣性過ぎる! プレイヤーG:すさまじい劣等生物(笑)。 プレイヤーT:こんなやついらねーよ(笑)。 プレイヤーM:これは……盾として役不可能? プレイヤーR:(真剣な表情でダイスを握り)役不可能かも……。 GM:なんだよ“役不可能”って。盾役として能力不足ってこと? プレイヤーM:そういうこと。いくらなんでもこれじゃあね。 プレイヤーS:いいよ、いいよ。やわらかやさしいチームでいこうよ(笑)。 他のプレイヤー一同:やさしいチーム? プレイヤーS:モンスターにやさしいチーム(笑)。 一同苦笑。じっと手を見る。 プレイヤーR:(結果をみんなに公表)最大HP、17っす(落胆)。 他のプレイヤー一同:やーばーい(笑)。 プレイヤーM:(信じられないといった様子で)マジで? GM:うっそー!? 戦士っしょ!? プレイヤーM:スカウトの俺が一番、最大HP高いじゃん。あ、いや、剣士のTくんが一番かな? プレイヤーK:なんかね、これね(このオリジナルのAA・TRPGのルールのこと)、キャラクターの最大HPの設定、低くない? GM:う、うん、そんなことは……。まあ、ある程度死にやすいのは仕様なんだけど……。 プレイヤーS:能力値のときと同じでさ、(最大HPを決めるダイス目は)1の出目を振り足しにしようよ。やっぱり。 GM:うーん、それはちょっと……わかりにくいかな。システムとして美しくない。 プレイヤーK:だけど、ダメージ計算は6の出目で振り足し出来るのに、HPは振り足し無しじゃあ……。 他のプレイヤー一同:そうだそうだ。ブーブー。 以下、ブーイングの嵐。6対1で弾劾されるGM。プレイヤーは自らのキャラクターの生死がかかっているので真剣。 ゲームを始める前に、戦士Rの最大HPの低さが大きな波紋を呼び、GMは急遽ルールの仕様変更を迫られたのだった。確かに、今のルールでは最大HPと最大MPがあまりにランダム性が高すぎて、運否天賦で大きな開きができてしまう。ただでさえこのAA・TRPGは、基本能力値によるキャラクターの優劣がつきやすいシステムなのにさすがにHPやMPでもここまで差が出るのはマズい……と、そう考え直したのである。 GM:じゃあこうしよう。最大HPはね、キャラクターの【生命力】×6が基本値。 プレイヤー一同:うっしゃーら!!! しゃー!!!(歓喜の声) プレイヤーM:そいつは、でかいね(ニヤリ)。 プレイヤーR:勝訴っす。俺たちの勝訴っすよー(と言って速攻で最大HPを書き換える)。 プレイヤーT:極悪GMに勝ったケケケ。 GM:え……(おろおろ)。 ここでGMは、プレイヤー一同が異常に喜んだため、不安に陥ってしまったのであった。 それもそのはず、たとえば【生命力3】のキャラクターについて従来の計算式で最大HPを求めると、まったく成長していないレベル0の平均値は「【生命力】D6」=「3D6」で10.5。 そして新しい計算方法では「【生命力】×6」の固定値で18。 前者の期待値と比べると7.5点も最大HPが上昇してしまうことになる。今回のキャラクターはレベル1なので、この値にレベルアップ回数分(今回は1回)、クラス別に設定されたHP上昇値(乱数)が加算されるものの、レベルアップの際に生命力を上昇させればそれるほどこの生命力基本値による最大HPの差は、開いていってしまうのだ。 GM:(おざなりに弱気になって)あ、やっぱり【生命力】×5。 このGMはプレイヤーが喜ぶとおざなりに弱気になる傾向が極めて強いのであった。 プレイヤーS:それでもいいや。あがるもん。上がって良かったー。 GM:(ここで、緊急に変わったルールを理解していないプレイヤーのために)あのね、最大HPは、【生命力】の値に×5して、それに1レベル分のクラス上昇値を加算した数値がレベル1の最大HPになるんよ。最大MPは【精神力】ね。【精神力】×5が基本値。 プレイヤーG:ああ、はいはい、そういうことね。 プレイヤーM:要するに、最大HP算出の「【生命力】D6」に、全部5の目が出たって感じだね。 GM:そうそう。全部ダイス目が5だったということ。ここでのランダム性排除。クラス上昇値だけランダム要素あり。 こうしてプレイヤー一同はそれぞれ最大HPと最大MPを決め直し、めでたくキャラクターが誕生したのであった。 GM:んーでは、ここから各プレイヤーはそれぞれのキャラクター名で呼ぶことにします。みんなもよろしく。なるべくキャラクター名で呼んでやってください。 プレイヤーG改め【ソニア】:いきなりはじめますかい。 GM:慣れが必要なので。リプレイでもそうします。 プレイヤーK改め【ウリ・ロー】:最後の確認だけど、最大HP・最大MPを決める際に振るダイスは一個だけだよね。 GM:そう。ダイスを振るのは一回、一個のみ。レベル分の上昇値だけ。クラス別上昇値ってやつね。レベル1なので一回だけ。 ウリ・ロー:了解。 プレイヤーS改め【プリティー】:つまんないなぁー。なんかみんな強くなっちゃったー。 プレイヤーM改め【ピエロ】:ね。なんかこれで、【生命力】は高いけど最大HPは低いとかいうような弱い戦士はいなくなっちゃったね。 GM:まあ、基本的に、やはり【生命力】が高ければ最大HPも高くなるものなので。でもレベルアップ時のクラス上昇値はランダム性が残ってるから。 ウリ・ロー:それにHPが高ければ強いと言うわけでもないしね。 プリティー:最初のほうが良かったなー。ぜって最初のほうが良かったよ。(隣のプレイヤーを指差して)このヒト、最大HP17でさ。 プレイヤーR改め【カリス】:だからそれはなくなったっす。 プリティー:最愛の劣等生物だったのに(笑)。 カリス:いいかげんにしなさいっす(笑)。 プリティーは密かに、最大HPの低いキャラクターたちがボロボロ死んでいくことを期待していたようである。 カオティックなプレイヤーの性格が見え隠れする彼女の言動には、今後も十分に注意する必要があるだろう。 そもそも、プリティー、さっきと言っていることがまったく逆になっているというのはいかがなものか? ピエロ:んーまあ、確かに【生命力】が高いのに最大HPが低いキャラクターというのもおかしいしね。 GM:これから、各プレイヤーは、キャラクターの【生命力】を1上げたら最大HPを5増やして。【精神力】を1上げたら最大MPを5増やして。(註:レベル上昇時に任意の基本能力値か技能点を1上げることができる。また、ランダムで最も高い基本能力値を除外した、基本能力値か技能点が1上がる) ピエロ:だけどこれだと、同じ【生命力】だとあまりHPに差が出なくなるね。 ウリ・ロー:いや、最初は差が出ないけど、レベルが上がってくるとクラス上昇値が効いてくるから、じわじわ差が出てくるよ。 プレイヤーT改め【フェーン】:なんにせよ、これで一発死にはなくなった。 カリス:良かったっすよー。開始早々死兆星が見えるとこだったっす(笑)。 こうして、緊急の仕様変更によりプレイヤーキャラクターたちの最大HP(ヒットポイントと)と最大MP(メンタルポイント)は軒並み上昇したのであった。 ちなみに、HPとはそのキャラクターの肉体的な頑強さを表し、負傷することで減っていき、0以下に落ち込むことで戦闘不能に陥り、受けたダメージの大きさに応じた、生死判定に突入する(ぴったりHP0で、難易度10の【生命力】を用いた生命抵抗判定となる。失敗すればそのキャラクターは肉体を破壊され死亡し、ゲームから除外される)。 また、MPとはそのキャラクターの心理的な頑強さを表し、精神的なダメージを受けたり呪文や戦闘技能を使用したりすることで減っていき、0以下に落ち込むことで戦闘不能に陥り、受けた精神ダメージの大きさに応じた、生死判定に突入する(ぴったりMP0で、難易度10の【精神力】を用いた精神抵抗判定となる。失敗すればそのキャラは魂を破壊され死亡し、ゲームから除外される)。 ゲーム開始前にルール面で波乱があったものの、なんとか無事にプレイを開始することが出来たので一安心である。 それではお待たせ、アイリンアルサームTRPGの西方奇譚――ある紅蓮の幼女とその下僕たちの活劇――の開幕である。 |